希望年収の決め方

エンジニアの希望年収はいくらに設定すべきか相場の決め方と、高すぎ・低すぎのリスク

職務経歴書の希望条件欄や面接で必ず聞かれるのに、誰も正解を教えてくれないのが希望年収です。高く書けば書類で落とされ、低く書けば入社後に取り返せない。

このガイドでは、現年収から何万円上乗せするのが妥当なのか、スカウトの提示額から自分の相場を測る方法、そして高すぎ・低すぎの境目がどこにあるのかを具体的に整理します。

現年収から「+何万円」が妥当か

ポイント

目安は現年収の+5〜15%です。それを超える希望を出すこと自体は可能ですが、「なぜその額なのか」を構造で説明できないと書類段階で落ちます。

電卓と資料を前に希望年収を考えているイラスト

まず前提として、転職での年収は「あなたの実力」ではなく「移った先の等級と給与テーブル」で決まります。同じ経歴でも、給与水準の高い会社に移れば上がり、低い会社に移れば下がる。

これは能力の評価ではなく、単に会社ごとの値付けが違うだけです。この前提を押さえておくと、希望年収を「自分の価値の申告」ではなく「どのレンジの会社を狙うかの宣言」として扱えるようになります。

そのうえで実務的な目安を挙げると、現年収の+5〜15%(年収500万円なら+25〜75万円)は、特別な説明なしでも通りやすい範囲です。企業側から見ると、いまの等級のひとつ上、あるいは同じ等級の上位という位置づけで、給与テーブルの中で無理なく吸収できます。

一方、+20%を超えると話が変わります。これは等級をまたぐ金額なので、企業は「ひとつ上の役割を任せられる人」として評価する必要が出てきます。

通らないわけではありませんが、年数ではなく担える範囲が変わったことを説明できなければ、書類で見送られます。

大きく上がるのは「構造が変わる」転職

+100万円以上のような大幅アップが実際に起きるのは、能力が急に伸びたときではなく、置かれる構造が変わるときです。代表的なのは次のパターンです。

商流が上がる

商流の下位から元請け・自社開発へ。同じ仕事に企業が払える予算の枠が広がり、それが原資になる

業界の給与水準が上がる

同じ職種でも、業界によって給与テーブルの高さが違う。SIerからWeb系・外資系への移動など

役割が変わる

実装専任からテックリード・EM・PdMへ。等級そのものが変わるので上げ幅も大きい

希少性のある領域に移る

セキュリティ・機械学習・SREなど、母数が少なく需要が高い領域は単価が別枠になりやすい

逆に言えば、この4つのどれにも当てはまらないのに+30%を希望すると、根拠を示せずに終わります。自分がどのパターンに乗っているかを先に確認してから金額を決めてください。

役割を変える方向で考えているならエンジニアのキャリアパス完全ガイド、商流や業界を変える方向なら働き方診断が判断の材料になります。

スカウトの提示額で自分の相場を測る

ポイント

推測で決める必要はありません。いまは企業が実際にいくら出すつもりかを、選考を受ける前に数字で見られます。

スマホでスカウトの提示額を確認しているイラスト

希望年収でいちばんやってはいけないのが、求人票の上限額や、SNSで見かけた誰かの年収を基準にすることです。前者は最も評価が高い人向けの枠、後者は経歴も会社も違う他人の数字で、どちらも自分の相場とは関係がありません。

代わりに使えるのが、企業側から金額つきで声がかかるスカウト系のサービスです。なかでも転職ドラフトは、企業が具体的な年収額を提示して指名する形式なので、「いまの自分にいくら出す会社があるか」がそのまま数字で見えます。

登録して待つだけなので、転職するかまだ決めていない段階でも相場だけ測れます。

サービス形式相場の読み取り方
転職ドラフト企業が年収額を明示して指名する指名額を並べて中央値を見る。最高額は外れ値として扱う
ビズリーチヘッドハンターと企業からスカウトが届く提示ポジションの年収レンジ。どの役割で声がかかるかも見る
FindyGitHubなどからスキル偏差値を算出偏差値帯に紐づく想定年収と、届く求人の年収帯
LAPRAS公開情報を自動で集めてスコア化登録直後に届くスカウトの年収帯。手間なく測れる

読み方は「最高額」ではなく「中央値」

提示額が10件集まったとき、つい最高額を自分の価値だと思いたくなりますが、それはたまたま予算が潤沢な1社の数字です。見るべきは並べたときの真ん中あたりで、そこが複数の企業から見た共通の評価になります。

希望年収は、この中央値の少し上に置くのが基本形です。

もうひとつ大事なのは、指名時の金額が確定額ではないことです。書類段階での暫定提示なので、面接を経て下がることもあります。

期待値としてではなく、あくまで相場を測るための物差しとして扱ってください。

なお、届くスカウトの数と金額は登録した経歴の内容でかなり変わります。職務経歴書が雑なまま測ると、実際より低い相場が出て、そのまま希望年収を低く設定してしまうことになります。

測る前に書類を整えておくのが順番として正しくなります。

高く設定しすぎたときに起きること

ポイント

いちばん怖いのは落ちることではなく、落ちた理由が伝わらないことです。予算が合わないという見送りは、応募者からはただの不合格に見えます。

低すぎる
適正ゾーン
高すぎる

低すぎる:自分で上限を作ってしまう。提示額はほぼ希望額どおりになり、あとから上げられない

適正ゾーン:相場の中央〜やや上。根拠を説明でき、交渉の余地も残る

高すぎる:書類段階で「予算が合わない」と見送られる。理由は応募者に伝わらない

※ 「適正ゾーン」の位置は企業の等級と給与テーブルで決まるため、同じ経歴でも会社ごとに動きます。 だからこそ、1社の反応ではなく複数社の提示額で相場を測る必要があります

希望年収が企業の想定レンジを超えていると、多くの場合面接に呼ばれる前に見送られます。採用側からすれば、通しても最後に金額で折り合わない可能性が高く、互いの時間を使うだけだからです。

このとき応募者に届くのは「今回はご期待に沿えず」という定型文だけで、金額が原因だったとは分かりません。

結果として起きるのが、書類の中身に問題があると思い込んで職務経歴書を書き直し続ける、という空回りです。応募がまとまって通らないときは、書類より先に希望額と応募先のレンジが噛み合っているかを確認したほうが早く解決します。

面接に進めた場合も、高い希望額は期待値を引き上げます。提示額に見合うかという目線で見られるため、同じ回答でも評価のハードルが上がります

金額を高く置くなら、それに見合う実績を語れる準備がセットで必要です。

低く設定しすぎたときに起きること

ポイント

提示額は希望額を基準に決まります。低く書くことは、交渉のスタート地点を自分から下げることと同じです。

「まずは入ってから実績で上げればいい」と考えて低めに書く人がいますが、これは仕組み上うまくいきません。企業は提示額を決めるとき、応募者の希望額を上限の目安として扱います

希望500万円と書いた人に600万円を提示する理由は、企業側にはありません。

さらに厄介なのが、入社後の昇給が入社時の等級を起点にした積み上げになることです。低い等級で入ると、その後の昇給率が同じでも金額差は開き続けます。

入社時の数十万円の差が、数年後には数百万円の差になります。

内定後に上げてもらう交渉も、現実には非常に困難です。提示額は社内で承認を通した数字なので、変更するには再度の調整が必要になり、「話が違う」という印象だけが残ります。

年収を動かせるのは、内定が出る前の一度きりだと考えてください。

× NG御社の規定に従います/特にこだわりはありません
◎ GOOD現年収は540万円で、600万円を希望しています。役割や評価制度も含めて相談させてください

前者は謙虚に見えて、実際には金額の決定権を全て相手に渡す答え方です。この場合に提示されるのは、ほぼレンジの下限になります。

希望年収の決め方(3ステップ)

ポイント

希望額を先に決めようとすると迷います。「これ以下なら転職しない額」から決めると、順番に定まります。

ステップ1:下限(撤退ライン)を決める

最初に決めるのは希望額ではなく、これを下回るなら転職しないという金額です。転職には引っ越しや有給消化の調整など見えないコストがあり、現年収と同額なら実質マイナスになることもあります。

基本は現年収を下限に置き、生活費から逆算した必要額のほうが高ければそちらを採用します。ここが決まっていないと、選考が進んだ勢いで不本意な額を飲んでしまいます。

ステップ2:相場を測る

スカウトサービスの提示額の中央値と、応募したい求人票のレンジを並べます。この2つが自分の相場です。

求人票のレンジは中央値あたりが標準的な着地点で、上限は最も評価が高い場合の枠だと考えてください。

ステップ3:希望額を相場の中央〜やや上に置く

測った相場の中央値から1割ほど上を希望額にすると、選考の土俵に乗りつつ、交渉の余地も残せます。そのうえで、ステップ1の下限との間が交渉可能な幅になります。

この幅を自分で把握しておくと、面接で金額を聞かれたときに迷いません。

計算例を挙げます。現年収540万円、スカウトの提示額の中央値が600万円だった場合、下限は540万円、希望額は650万円前後、交渉可能な幅は540〜650万円です。

面接では650万円を提示し、条件を詰める中で600万円台前半に着地する——という展開が想定できます。

書類・面接での伝え方

ポイント

金額そのものより「なぜその額なのか」がセットになっているかで印象が変わります。根拠は市場の数字と、担える範囲の2つで作ります。

面談で条件を伝え合っているイラスト

職務経歴書や履歴書の希望条件欄では、単一の金額を書くよりも希望額+相談の余地を添える書き方が扱いやすくなります。「650万円を希望(役割に応じて相談可)」のような形です。

金額を明示することで土俵に乗り、相談可と書くことで一発で切られるのを防げます。

面接で理由を聞かれたときは、根拠を2つ用意しておきます。ひとつは市場の数字(他社からの提示額の水準)、もうひとつは担える範囲(設計から運用まで一人で回せる、チームのレビューを主導しているなど)です。

「生活のため」「前職が安すぎたので」は根拠になりません。企業が払う理由にならないからです。

この「担える範囲」を面接で語るには、職務経歴書の段階で言語化されている必要があります。担当した工程と成果が構造的に整理されていれば、そのまま金額の根拠として使えます。

このサイトの作成ツールは、担当工程マトリクスや実績欄を備えたテンプレート10種から選んで、ステップ入力するだけでA4のPDFを作れます。登録不要・無料で、データはブラウザ内にのみ保存されます。

希望条件欄のある履歴書もあわせて作成できます。

なお、金額の話を切り出すタイミングそのものに悩む場合は、転職のやり方ガイドで触れているとおり、エージェント経由なら交渉を代行してもらえます。自分で言いにくい金額の話を任せられるのは、この経路の実質的な価値のひとつです。

経験が浅い段階での書き方は経験が浅い人の書き方ガイドを参考にしてください。

よくある質問

Q.希望年収を現年収より低めに書くと、選考は通りやすくなりますか?

通りやすさはわずかに上がるかもしれませんが、割に合いません。企業は提示額を決めるとき、応募者の希望額を基準にします。低く書けばその金額が上限として扱われ、あとから「やはり上げてほしい」と言っても、社内では稟議や等級の再調整が必要になるためほぼ通りません。選考通過のために年収を下げるのは、入社後に取り返せないコストを先払いするのと同じです。通過率を上げたいなら、金額ではなく職務経歴書の中身を直すほうが確実です。

Q.求人票に書かれた年収レンジの上限を希望してもいいですか?

構いませんが、上限額はたいてい「その等級で最も評価が高い人」に用意された枠です。希望するなら、その水準に見合う実績を書類と面接で説明できる状態にしておく必要があります。目安として、レンジの中央から上寄りを希望額にすると、根拠を説明しやすく交渉の余地も残せます。なお求人票のレンジは経験年数ではなく等級で決まっていることが多いので、「何年やったか」ではなく「どの範囲を任せられるか」で語ると噛み合います。

Q.面接で「希望年収は?」と聞かれたら即答すべきですか?

即答して構いませんが、単一の金額ではなくレンジで答えるのが安全です。「◯◯万円を希望していますが、役割と評価制度を含めて相談させてください」という形なら、金額を示しつつ交渉の余地を残せます。避けたいのは「御社の規定に従います」という答え方で、これは実質的に決定権を相手に渡すことになり、多くの場合レンジの下限が提示されます。逆に根拠のない高額をピンポイントで出すのも、市場を調べていない印象を与えます。

Q.転職ドラフトなどで提示された指名額は、そのまま信じていいですか?

そのままの金額が保証されるわけではありません。指名時の金額は書類段階での暫定的な提示で、面接を経て確定額が決まります。実際には指名額どおりのこともあれば、下がることもあります。使い方として正しいのは、個別の最高額を期待値にすることではなく、複数の提示額を並べて中央値を見ることです。外れ値を除いた真ん中あたりが、いまの市場から見たあなたの相場に近くなります。

Q.実務経験が浅い場合、希望年収はどう考えればいいですか?

経験1〜3年のうちは、希望額そのものより「入ってから上がる仕組みがあるか」を優先したほうが、数年後の年収は高くなります。この時期は市場価値の幅が狭く、無理に高い希望を出しても通らないうえ、通ったとしても期待値だけが上がって苦しくなります。現年収と同等か少し上を希望額に置き、評価制度・昇給の実績・任せてもらえる範囲を面接で確認するほうが実利があります。書類の作り方は経験が浅い人向けのガイドを参考にしてください。

希望額の根拠は、職務経歴書の中にあります

担える範囲が整理されていれば、そのまま金額の根拠になります。 テンプレート10種・履歴書対応・登録不要の作成ツールで、まず経歴を棚卸ししてみてください。

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