SESの職務経歴書が書きにくい3つの理由
書きにくさには理由があります。どれも書き方で解決できるもので、経験の価値が低いわけではありません。

案件の数が多い
2〜3年で10件を超えることもある。全部を時系列に並べると、読み手はどれが得意分野か分からない
社名を書けない
常駐先には秘密保持契約がある。書けないまま空欄にすると、案件の性格が伝わらない
担当が部分的に見える
工程の一部だけを任されることが多く、「テスト」「実装」と書くと作業の名前だけが並ぶ
採用側はSESという働き方を知っています。社名が伏せてあることも、工程が分かれていることも前提として読んでいます。それでも書類で落ちるとしたら、経歴ではなく「何ができる人なのかが分からない」ことが理由です。
直すのは経歴ではなく
「並べ方」と「言い換え」
案件を「代表+一覧」に畳む
全案件を同じ濃さで書かないでください。詳しく書くのは3〜5件、残りは一覧と1行にまとめます。

まず全案件を手元に書き出し、応募先の仕事に近いかどうかで3つに分けます。近いものが代表案件、関連するものが一覧、そのほかがまとめて1行です。時系列は一覧の中で保てるので、順番より先に濃淡を決めてしまうのが早道です。
整理前(12案件を時系列で全部)
代表案件 3件
職務経歴として詳しく書く。体制・担当工程・判断したこと・実績まで
関連案件 4件
1案件1〜2行の一覧にする。期間・業種・役割・使用技術だけ
短期・同種 5件
「そのほか(保守・検証など5件)」とまとめて1行で触れる
分け方の手順
① 全部書き出す
期間・業種・システム・担当工程・使用技術・体制人数を1行ずつ。この段階では順番も文章も気にしない
② 軸でまとめる
使用技術・業務ドメイン・役割のどれかでグループにする。同じ技術の短期案件は1件として扱う
③ 代表を選ぶ
応募先の求人にある技術や工程と重なる案件を3〜5件。迷ったら「自分で判断したことが多い案件」を選ぶ
④ 残りを圧縮する
関連案件は1〜2行の一覧、同種の短期案件は「そのほか(保守・検証など5件)」で1行
職務要約でも同じ考え方を使います。「12件の案件を経験」ではなく、「金融系の基幹システムを中心に、要件定義から結合テストまで5年」のように、何の経験が積み上がっているかを先に言ってください。
案件の入力と並べ替えは作成ツールでそのまま試せます。案件の複製と並べ替えができるので、書き出した順から代表案件を上に移すだけで形になります。案件単位で並ぶ様式(スキルシート)が必要なときはスキルシートの書き方を参照してください。
常駐先の社名をどう書くか
社名は「業種・規模・自分の立場」に置き換えます。書いてよい範囲は契約で変わるので、迷ったら自社に確認するのが確実です。

常駐先の社名や社内システムの固有名は、秘密保持契約の対象になっていることがあります。一方で雇用元である自社の社名は隠す情報ではありません。この2つを分けて考えると、書ける範囲がはっきりします。
| 情報 | 書き方 | 書いた例 |
|---|---|---|
| 常駐先の社名 | 業種・規模・自分の立場に置き換える | 大手通信会社(常駐・準委任、体制20名規模) |
| 自社(所属先)の社名 | そのまま書く。雇用元は隠す情報ではない | 株式会社◯◯(SES・システム受託) |
| 社内システムの固有名 | 何をするシステムかで言い換える | 販売管理システム/会員向けスマートフォンアプリ |
| 公開されていない数字 | 幅を持たせた規模感にする | 月間数十万リクエスト規模/取引先200社規模 |
| 公表済みの事例 | 出典があるなら社名も書ける(自社の導入事例ページなど) | ◯◯社の事例として公開(自社サイト掲載) |
迷ったときの確認先
自社の営業担当
常駐先ごとの取り決めを把握している。転職活動中であることを言いにくい場合は、一般的な取り扱いとして聞けばよい
契約書の秘密保持条項
自分が署名した誓約書や就業時の説明資料に、何を秘密情報とするかが書かれている
転職エージェント
同じ業界の書類を多く見ている。伏せ方の相場や、応募先が気にするかどうかを聞ける
なお、面接では書類より詳しく聞かれることがあります。そのときも「社名は申し上げられませんが、業種と規模でお話しします」と前置きすれば問題になりません。話せる範囲を先に決めておくと、当日に迷わなくなります。
「テストだけ」に見える担当の書き方
工程の名前だけを書くと作業の一覧になります。その中で自分が決めたこと・工夫したことを1つ足すと、担当範囲が伝わります。
与えられた作業でも、観点・順番・手順は自分で決めています。そこが書かれていないと、同じ「テスト担当」が誰でも同じに見えてしまいます。
| よくある書き方(作業の名前) | 書き換えたあと(判断と工夫) |
|---|---|
| テスト工程を担当 | テスト設計から担当。仕様の曖昧な箇所を洗い出して観点を追加し、結合テストでの差し戻しを減らした |
| 指示された機能の実装 | 既存コードの構造に合わせて実装方針を決め、影響範囲を先に一覧化してレビューで指摘される修正を減らした |
| 監視・障害の一次対応 | 手順書にない事象の切り分け手順を追記し、二次対応へ引き継ぐまでの時間を短縮した |
| 仕様書・手順書の作成 | 担当者ごとに書式が違っていた手順書をひな型に統一し、新しく入ったメンバーが単独で作業できる状態にした |
| データ移行作業 | 移行前後の件数と金額を突き合わせる確認用のクエリを用意し、本番移行での差異ゼロを確認できる手順にした |
案件1件の書き方のNG / GOOD
2024年4月〜2024年12月/A社/販売管理システムの改修
担当:詳細設計、実装、単体テスト
使用技術:Java、Spring Boot、Oracle
2024年4月〜2024年12月(9ヶ月)/大手卸売業向け 販売管理システムの改修(常駐・準委任、体制12名/うち開発4名)
担当:受注機能の詳細設計〜単体テスト。既存の受注登録が画面ごとに別実装になっていたため、共通化する方針を提案して設計に反映。改修範囲の影響一覧を先に作り、結合テストでの差し戻しを前回改修の半分以下に抑えた。
使用技術:Java 17、Spring Boot、Oracle、Jenkins(CIの設定変更も担当)
違いは情報量ではなく、体制の中での自分の位置と、自分で決めたことが入っているかどうかです。書ける材料がないと感じるときは、その案件で「困ったこと」と「どう片付けたか」を思い出すと出てきます。実績の書き方は実績を数字で書く方法、職種ごとの要点は職種別・職務経歴書の書き方にまとめています。
SESでも使える実績の数字
売上や利用者数を持っていなくても、自分の手元には数えられるものがあります。
自社サービスの開発と違い、SESでは事業の数字を追いにくいのが普通です。そこで、自分の担当範囲で動かせた数字を使います。
体制と自分の役割
「体制20名/開発6名のうちサブリーダー」。規模と立場が分かると任せられる範囲が伝わる
担当した量
担当機能の数、画面数、テストケース数、移行したデータの件数
減らしたもの
手順の自動化で削減した作業時間、差し戻しの回数、障害の再発件数
早くしたもの
定例作業の所要時間、ビルドやテストの実行時間、障害の一次対応までの時間
品質の変化
レビュー指摘の傾向、結合テストでの不具合件数、リリース後の問い合わせ件数
継続の実績
同じ現場での契約更新回数や在籍期間。指名で延長された経緯は信頼の証明になる
正確に測っていない場合は「約」「程度」を付けて概算にします。答えられない数字は書かないのが原則で、面接で根拠を聞かれて説明できる範囲に留めてください。
整理前と整理後の完成イメージ
同じ経歴でも、畳み方と言い換えで読みやすさが変わります。職務要約の部分で比べてみます。
SES企業に5年在籍し、12件の案件に参画してきました。Java、PHP、SQLなどを使用し、詳細設計、実装、テスト、運用保守を担当しました。コミュニケーション能力を活かしてチームに貢献してきました。
SES企業で5年、業務システムの開発に携わってきました。直近3年は金融・卸売の基幹システムで、詳細設計から結合テストまでを担当(体制10〜20名、常駐・準委任)。既存実装の共通化や影響範囲の洗い出しを自分から提案し、差し戻しの削減に取り組んできました。主要技術はJavaとSpring Boot、SQLチューニングの経験もあります。今後は、要件の背景から関わって改善を継続できる環境で開発したいと考えています。
案件の一覧は、代表案件を上に3件置き、その下に一覧表を続けます。SES・受託の経歴は紙面の形が決まっている様式の方が読みやすく見えますので、テンプレートは「SIer標準型」から試してみてください。案件が多い場合でも、改ページは作成ツール側で自動的に調整されます。
SESから自社開発や社内SEへ移りたい場合は、同じ経歴でも強調する場所が変わります。どの働き方が自分に合うかは働き方診断で確かめられます。
よくある質問
Q.案件は何件くらい書けばいいですか?
詳しく書くのは3〜5件で十分です。残りは1案件1〜2行の一覧にまとめ、短期や似た内容のものは「そのほか(保守・検証など5件)」と1行で触れれば足ります。件数の多さ自体が評価される場面はほとんどなく、応募先の仕事に近い案件が読みやすい位置にあるかどうかで判断されます。
Q.常駐先の社名を全部伏せると、経歴が薄く見えませんか?
伏せること自体は不利になりません。守秘義務のある働き方だと採用側も分かっているためです。代わりに「業種・規模・自分の立場」を書いてください。「大手通信会社(常駐・準委任、体制20名規模)」まで書けば、社名がなくても案件の性格は伝わります。薄く見える原因は社名ではなく、担当範囲と判断が書かれていないことの方が多いです。
Q.1〜2ヶ月の短期案件も書いた方がいいですか?
1件ずつ立てる必要はありません。同じ技術や同じ業務ドメインの短期案件はまとめて1件として扱い、「同種の保守案件を4件(各1〜2ヶ月)」のように書くと、期間の細かさが気にならなくなります。応募先が求める技術と重なる案件だけは、短期でも独立させて書く価値があります。
Q.待機期間や自社研修の期間は書くべきですか?
案件と案件の間が数ヶ月空いている場合は、空白のままにせず「自社研修・待機(資格取得、社内ツールの開発)」のように一行入れておくと、読み手の疑問が残りません。長い待機が続いた時期は、その間に何をしていたかを具体的に書ければ十分です。
Q.スキルシートと職務経歴書は両方出すのですか?
応募先によって変わります。事業会社の中途採用では職務経歴書だけを求められることが多く、SES・受託の案件応募ではスキルシート(経歴が案件単位で並ぶ様式)を求められます。どちらも同じ材料から作れるので、まず案件の整理を済ませてから様式を選んでください。違いは「スキルシートの書き方」にまとめています。
